鹿鼎記

鹿鼎記 1 少年康熙帝

鹿鼎記 1 少年康熙帝

金庸はこの作品を最後に絶筆宣言をしており、事実上最後の作品となっている。

金庸作品といえば、主人公があれよあれよと強くなり、強さこそが全ての江湖の世界で名を馳せていくというパターンが多いが、この作品の主人公、韋小宝に限ってはそうではない。数々の達人達から教えを受け、強くなるチャンスはいくらでもあるのだが根っからの修行嫌いで最後まで徹底して強くならない。とにかく口八丁と立ち回りの上手さだけで出世していく物語である。武侠小説としては共感できない姑息な主人公だがどこか憎めないのは要所要所で五分の義理堅さを発揮するためだろう。この辺は金庸にして新しい試みであったようでもある。話としてはまあさすがに金庸作品で、一度読み出すとやめられない。初期の作品碧血剣のキャラが久々に登場したり、冷狐沖や欧陽蜂などのおなじみの英雄が物語上の史実における実在の人物としてチラリと表記されていたりと、ちょっとしたファンサービスにニヤリとさせられる。

☆4つ