唐招提寺

DEka2007-06-10


唐招提寺は好きな寺の1つで、規模やモノの素晴らしさの割には人が少なくて静かである。今回思い立って9年ぶり位でこの寺に行ってきた。もともとこの寺の見所の1つは天平の甍で有名な金堂で、南大門をくぐってすぐ金堂の姿はなかなかに威厳があるのだが、残念ながら今は修復中なので拝むことはできない。その代わりに期間限定で金堂の三尊を間近に見ることができた。もちろん今回の大きな目的はこの三尊である。


日本の有名な仏像に千手観音がある。その名の通り千本の手を持つ観音様なのだが実際に千の手を持つ仏像はそう滅多に拝めない。1つは大阪藤井寺市葛井寺の千手観音でもうひとつはここ唐招提寺の千手観音である。もうはるか昔の奈良時代の観音様なので当然痛みが激しく、こちらも改めて修理が必要なので千ある手がバラバラにされている。これは科学の技術が進んだ現代といえど骨の折れる作業だなあと感心するばかりである。後は本尊の盧遮那仏などもよく見えた。まあこの仏像は脱活乾漆造で乱暴な言い方をすればタダのハリボテなのだが霊気立ち込めるお堂の中で千年以上も人々から拝まれてきただけにただ事でないオーラを放っている。人の情念を千年以上も浴び続ければそりゃあ魂も宿るだろう。ここでしっかりと治療を受けて後世に永く受け継がれて欲しい。

その後これまた特別公開の鑑真和上像を拝見。鑑真と言えば仏法を伝えるために当時危険な航海にチャレンジし、目から光を失いながらも5度目の航海をようやく成功させ、日本に初めて戒壇を作ったという不屈の坊さんである。仏教に帰依するかどうかはさておいて、この壮絶なエピソードにはやはり敬服する。ところでこの鑑真が祀られているお堂には東山魁夷が障壁画を手がけている。これがまた非常に主張の激しい絵で鑑真への敬意が全く感じられず、個人的には非常に不満である。