季節はずれに想う桜

長年楽しみに見続けてきた近所の桜の木が近頃無くなっていることに気がついた。寂れた団地の一角に根ざし、大きく枝を広げるその桜は、ボロい団地を背景にするには似つかわしくない凛とした姿で、それはちょっとしたもんだった。まあ移住が始まるほど老朽化していた団地の一角にあっては再開発の波をかぶるのは時間の問題だったのだろうが、それにしてもがっかりなことだ。少し救われたのは、桜のあった場所に切り株が無かったことだ。根こそぎ取り払われ、どこか他の受け入れ先に移植されたのであればそれでいい。そしてまた次の春にはどこかで花を咲かせ、通りかかる人の慰みになればと願う。